「立ち聞きとは、いい趣味じゃないな」
敬悟が声の主、木部上総を睨め付けるが、上総は動じる風もない。
「儀式前の大切な、お姫様ですからね。何かあっては、こちらの首が飛んでしまいます」
クックックッと、目を細めて楽しげに嗤う顔が、蛇を思わせた。
茜たちの方に歩み寄って来た上総がすっと、落ちていたペンダントに手を伸ばす。
瞬間、青い閃光が走り、『じゅっ』と異音が上がる。
肉の焦げたような鼻をつく嫌な臭いが辺りに立ちこめた。
「やはりダメか。忌々しい。これさえ無ければ、事は簡単だったものを……」
上総の右手は、焼けただれて色が変わっている。
初めて嗅ぐ人の肉の焼ける臭いに、茜は吐き気がこみ上げてきて、思わず口を両手で押さえた。