「一つだけ教えて。真希はどうなるの?」
涙に濡れた瞳で、茜はキッと敬悟を見据える。
敬悟はその強い眼差しを真っ直ぐ受け止めると、静かに口を開いた。
「……今頃は、目を覚ましているはずだ。元々あれは、軽い暗示をかけただけだ……」
「暗示?」
訝しげに眉を寄せる茜に、敬悟がゆっくりと頷く。
「彼女には、ごく薄まってはいるが、この木部《きべ》一族の血が混じっている。暗示でその血を刺激して一過性の鬼人化現象を誘発したが、そのまま元に戻れないと言うことはない」
「木部一族の……血?」
「ああ。そうだ」
「そして、茜様。貴方はその正当な血を受け継いだ、最後の一人なのですよ――」
不意に割り込んできた声にぎくりとして、二人が声の方を振り返る。
敬悟が入ってきた襖の所に上総が立っていた。