心の中で渦を巻いて吹き出す場所を求めていた感情が一気に溢れ出す。 


「今まで、ずっと騙して来たの!?」


高ぶりすぎた感情のせいで、声が震えてしまう。


「……」


「全部、嘘だったの!?」


黙ったままの敬悟の両腕を掴んで揺さぶる。


何かの間違いだと、全部嘘だったと否定して欲しかった。


だが敬悟は何も答えず、茜の為すがまま、ただその様子を見詰ているだけだ。


手のひらに伝わる温もりは何一つ変わりがないのに、今はこんなにも遠いその存在。


――私は、いったい、この人の何を見てきたの?


「答えてよっ!」


茜の瞳から、つうっと一筋涙がこぼれ落る。


それを目にした敬悟の表情が初めて動いた。


眉をひそめ曇る表情は、どこか悲しげにも見える。