「え!?」
目に飛び込んできた風景に驚いて、茜は思わず跳ね起きた。
な、な、なにこれ!?
金魚よろしく口をパクパク開け閉めする茜に、男が『しぃっ』と人差し指を自分の口元に持っていき『喋るな』とジェスチャーを送る。
「食べ合わせが悪かったのでしょう。食い意地が張った妹で、お恥ずかしい」
「まあ」
男の言葉に、涼やかな声の主が、くすくすと楽しそうな笑い声を上げる。
男の方は、見たことが無い。
でも、女の方には見覚えがあった。
ついさっき出会ったばかりの美貌の雑誌記者、佐伯麗香。
その人に間違いない。
でも、服装が違った。
白いカットソーと活動的なパンツスーツではなく、目の前の麗香は着物を着ていた。
ついでに、髪型も無造作にアップにしているのではなく、きちんと結ってある。
そう、まるで『時代劇』に出てくるような格好を、麗香はしていたのだ。
茜はその様子を、ただ呆然と見詰めた。