高台にある境内に続く急な石段を登り切る少し手前で、麗香の話は済んでしまった。
「そうですか……」
敬悟は力無く呟いた。
その投書が匿名で無ければ調べようもあるが、これでは収穫は無いに等しい。
「役に立てなくて悪かったわね」
「いえ。無理を言ってすみませんでした」
旅は始まったばかり。
すんなり答えが見付かると思う方が、間違いなのかも知れない。
「ところで、後ろの大きい彼氏は、君たちの知り合いなの?」
麗香が、自分たちに一歩遅れて石段を登ってくる信司をチラリと振り返る。
その視線に気付いた信司が『だるまさんがころんだ状態』で、ピキッと固まった。
「あ、はあ、まあ……気にしないで下さい」
茜が引きつった笑顔で答える。
「何? 彼女のストーカーとか?」
「ち、違います! ただの同級生ですよ! たまたま来る場所が一緒になっただけですっ!」
手をブンブン振りながら、茜が最後の一段を上りきり、赤い鳥居をくぐった瞬間だった。
グニャリ――。
空間が歪んだような気がした。