――敬にぃって、嘘付くの上手かったりする?


というか、女性の扱いに慣れてる?


これほどの美女を目の前にしながら、顔色一つ変えるでもなく嘘を並べられる敬悟の姿に茜は少なからずショックを受けていた。


思えばここ数年来、敬悟とこうして家以外で長い時間を共に過ごすのは久しぶりだった。


小学5・6年生くらいまでは、何処に行くにも敬悟に付いて回ったものだが、今はほとんどそう言うことは無くなっていた。


敬悟との微妙な距離感。


それは何となく感じてはいたが、兄妹のように育った『いとこ同士』とはいえ男と女。


仕方がないことだと、幾ばくかの寂しさの中でそう思っていた。


自分は、敬悟の事を知っているようで知らない。


チクリと、胸の奥が傷むのを茜は感じた。