「ですから、研究テーマの一環なんです。教授から、いくつかの研究ワードが出されていて、その一つが『キリガクレノサト』なんです。でもいくら調べても、地名らしいこと以外は詳細が分からなくて……」
敬悟は、困ったように言葉を濁した。
もちろん、これは敬悟の作戦である。
こういう一筋縄では行きそうにない相手には、ひたすら低姿勢にお願いするに限る。
経験から敬悟はそう判断していた。
「できれば、佐伯さんの知っていることを教えて頂ければ、有り難いんですが……」
敬悟がニコリと、人好きのする営業スマイルを浮かべる。
茜は複雑な気持ちでそれを見ていた。