携帯電話を握る白く美しい手。


その指は、まるでピアニストのように細くしなやかだ。


彫りの深いシャープな顔立ちは、どこかエキゾチックで、もしかしたらハーフなのかも知れない。


やや広めの額は、理知的な印象を与える。


その額に落ちかかる、緩やかなウェーブの掛かった柔らかそうな髪。


憂いのある瞳。


伏せられた長いまつげ。


無造作に纏めた豊かな漆黒の髪が、白い肌をより際だたせている。


やや大振りの耳には、血のように赤い小さなルビーのピアス。


形の良い赤い唇が優雅に動く様に、茜は『ぼぉっ』と見入ってしまう。


ピシャリ!


「え? あ、あれ?」


玄鬼に尻尾で腕を叩かれて、茜は我に返った。


「おなごに見ほれて、どうするんじゃ」


「あ、あははは……」


そんなこと言っても、綺麗なんだもん。


少し顔を赤らめつつ再びお隣に視線を戻すと、電話を終えたらしい当の美女とばっちり目が合った。