『キガクレノサト』を探しているらしい雑誌記者。
その記者ならば、何か情報を持っているかもしれない。
少なくとも『キガクレノサト』をどこで知ったのか、その情報源を聞くことは出来る。
「あの、その人の連絡先、分かれば教えて頂けませんか? 雑誌で特集を組まれるなら、参考になるお話が聞けると思うので……良ければですが」
遠慮がちに申し出た敬悟のセリフに、老人は『その方が参考になるだろうね』と、ニコニコと雑誌記者の名刺を渡してくれた。
どうやら、悪用はしないと信用してくれたようだ。
『月刊ミステリー・Moo
編集部 佐伯麗香』
白いシンプルな名詞に視線を走らせる。
敬悟も茜も知らない雑誌だ。
「あの、それで『キガクレノサト』についてなんですが……」
「ああ、そうだったね。さっきの人にも言ったんだが、残念ながらそう言う地名は聞いたことがないんだよ。古い文献のデータも調べてみたんだけどね、見あたらなかった」
ただ――、と老人は付け加えた。
「ここ、鬼志茂には『鬼伝説』が残る神社があるんだよ」と。