嫌いだった言葉を、私は、このこたちに向けていた。

私も……同じだ。

私に 「可哀想」だと言った人たちと……同じだ。

「可哀想」なんかじゃない。

私は………「可哀想」なんかじゃない。

このこたちだって、「可哀想」なんかじゃない。

だから、今日の動物園は、私には大切な日。

生きていること、今、誰かが自分を必要としてくれていること。

自分で確認したかった。

目の前の小さなキツネを見つめながら、きっと、みんな、ひとりだけどひとりじゃない。

君を守るため、沢山の人達が君を愛している。

「マーク」

と書かれた小さなネームプレート。

手書きのそれは、沢山の愛が詰まっていた。


『ボクハダイジョウブ』


君の瞳が笑っていた。