「あの、さっきから気になってるんですけど…」

「何、なっちゃん」

「神谷先輩が人に何かを頼むのがそんなに珍しいんですか?」

私がその一言に、全員が目を丸くした。


神谷先輩って普段はどんな人なんだろう。

パッと見、他の人よりも綺麗な印象を受けたけれど…


「珍しいことなんだよ、なっちゃん」

真剣な顔つきでそう言う時矢先輩。

「神谷くんはね、普段は冷酷極まりない子なんだよ。クラスでは上手くやってるみたいだけど、俺達生徒会の前ではね、それはもう鬼畜なんだ…。この世は全て俺のものみたいなね」

時矢先輩の説明に、うんうんと頷く先輩達。

「この世が全て俺のものなら、人を使うのも当たり前なんじゃないんですか?」

「いや、それは違うよ。人を使うっていうのは、その人に頭を下げるってことでしょ?」

「はい…」

「だから、神谷くんは絶対にそんなことはしないんだ。自分のことは自分で何とかする子だからね。まぁ、それ以上のことはしないんだけど…」

苦い表情をしている時矢先輩。

きっとそのことに関して思い出したくない出来事でもあったのだろう。

でも私にはそんな風には見えなかったけどな、神谷先輩。

綺麗だったし、年下の私にも敬語だったし。

世界違うよなぁ、って感じで。

生徒会の人達の神谷先輩への印象が、理解できなかった。