彼の茶色の髪が、葉の間から覗く日差しにちらちらと照らされている。

すっと筋の通った鼻、薄い唇、長い睫毛。

まるで王子様を連想させるその風貌に、思わず見入ってしまう。

そういえばこの人、何処かで見覚えが…。

これだけ綺麗な人なんだから、絶対印象深い筈。

たとえ廊下ですれ違っただけだとしても、きっと目を奪われてしまう筈だ。

第2ボタンの辺りまで緩められたネクタイの色は赤。
その色は、1つ上の学年を表している。


両腕を前で組みながら、記憶の片隅を辿った。


………あっ!思い出した!


「この人、生徒会の人だぁ!」


つい、声を出してしまった。

慌てて口を両手で塞ぐが、その行動は最早意味を成していなかった。


私の声に反応したのか、瞼によって閉ざされていた瞳が、ゆっくりと姿をあらわにした。