ちょうどアパートに着いた頃、携帯がバッグの底で必死に震え始めた。

鍵を開けながら、着信を確認。

紗季の名前を確認し、耳にあてた。


「はいはい、なんだい?」


『空良、大丈夫?』


「大丈夫だよ?なんで?」


『なんでって……ま、いいや。ポンチョ、大和に持たせたから。』


「あぁ、ポンチョね。ありがと。大和、持ってくるかな?」


『空良、ちょっと甘えたりしてごらんよ。』


「甘える?誰が?」


「空良が。」


急に近くで聞こえてきた声に驚いて振り返る。


「へっ?何?」


『空良?そーらー!』


携帯の向こうで叫ぶ声。


「空良ちゃん確保しました。ご心配ありがとうございます。では、またね。」


目の前で私の携帯を手にする元カレ。