「いきなり現れて批判を始める人物が、どれだけ偉大な人なのか知りたくなった。教えてくれないか?」

私はあくまでもハリーに質問を投げ続けた。
向こうが答えないのなら、こちらも答える必要もないはずだ。

「あなたにいう必要はありませんね」

と、にべもない返事がかえってきたのには、いささか落胆した。
こいつは、いったい何を言っているのだろうか。

「名乗りもしない、質問にも答えない、間男の分際で非難だけはしようってのか」

私はゆっくりと、言葉をつむいでいく。
「彼女をどう思っている?かわいそう?気持ちを考えたことがあるのかって?」

チャットウィンドウには、いささかの邪魔も入らない。
私の独壇場だ。

「戯言もいい加減にしたらどうなんだ。名乗りもしない人間に何故私だけ答えねばならんのか。それこそ、あなたにいう必要はありませんね。だ」

そう言われてカチンときたのか、ハリーは反論を始めたが、私は構わず続けた。

「薄汚い盗人が、思い上がるんじゃあない。好人物のを気取っているのかもしれないが、何のことはない。ただの間男だ」

「アンタ、何様のつもりなんだよ。偉そうに」

「俺は彼氏だ。お前はクズだ。クズは図に乗るのと女に乗るのは得意らしいな」

私がそういうと、それきりハリーは黙ってしまった。