「私、鬱だから」

ビュネは私に打ち明けた。

薬を服用していること、仕事や学校などの社会生活を満足に送れないこと、今の家族と血
が繋がっていないことなどを語った。

どれも初めて聞く話で、どれも私には重い内容だった。

為になる話も、アドバイスもできず、私は時折相槌をうつしかできなかった。

だが、それがよかったのかも知れない。

ビュネが私に求めていたのは、カウンセリングなどではなく、話を聞いてくれることだっ
たのだろうと思う。

話を聞いていると、ビュネは唐突にURLを提示してきた。

「これ、私のホームページ」

言われるままにそこにアクセスすると、強烈な映像が飛び込んできた。

ショッキングピンクの背景に、子供の落書きのような絵が散りばめられていた。

整合性のかけらもなくリンクが配され、掲示板は気づいただけでも五つはあった。

私は言葉を失った。

何を言っていいかわからない。

ダサいわけでも、格好いいわけでもなく、使いやすくもなく、凝っているわけでもない。

今までに色々と見てきたが、こんなホームページを見るのは初めてだった。

あまりに形容しがたいものだが、敢えて形容するならば…病的。

その言葉がもっとも相応しく思えた。

「掲示板にカキコしてね」

ビュネはそう言っていたが、五つもある掲示板のどれにかけばいいのかわからない。

私はヒントを探るような気持ちで、それぞれの掲示板を見比べた。

私には意図がわからないが、彼女にはきっと何か違いがあるのだろう。

それを見極めんと覗いてみたが、違いはよくわからなかった。

ただ、同じ人物が違う掲示板に現れることはなかった。

それぞれの掲示板には、それぞれの住人がいて、そこからでることはない。

かきこみの数は全部集めたら二十を超える。

それを苦にもせずに返事をかくビュネを私は愛しはじめていたのかも知れない