このまま眠ってしまいたい。
やさしく包まれるような布団の感触に、私はすっかり魅了されていた。

「はいはい、寝ない寝ない」

私が目をつぶったのと同時に、ビュネはベッドを揺らした。

「はぁ~、ええ気持っちゃ~」

「だめ!」

大声をあげてビュネが私の足を叩いた。
驚いた私は、飛び起きてしまった。

「す、すいませんでした」

文句を言ってやろうかと思ったが、ビュネの顔があまりにも怖かったので、ついつい謝ってしまった。
こんなことで良いのだろうか。

「先に寝ちゃ駄目」

「はい」

私はすっかり彼女の言いなりだった。

「ちょっとシャワー浴びてくるから、待っててね」

「はーい」

そう言いながらも、私はうとうとしていた。
シャワーの水音をBGMに、虚空を見つめているとやがて彼女がバスルームから出てきた。

「お待たせ」

バスタオルを肌に巻きつけたビュネが、にこやかに笑いかける。
彼女の胸元には、蝶をあしらった刺青があったのを憶えている。