「さよなら〜。」


とびきりの笑顔で手を振り、ドアが閉まる。

ガラスの向こうで呆気にとられたようなポカーン顔の悠貴。

慌てて手を振った時には、私の笑顔なんてもう見えていないだろう。

見えない相手に振った手を、どんな顔して見ているんだろうか。

ちょっとだけおかしくなって、力が抜けた。


「相変わらず嘘つくの下手だね、悠ちゃんは。」


今週に入って、もう三回目のやりとり。


「俺んち行ってて。お泊まりコースでよろしく。」


そう言って約束した先週の週末から始まったドタキャン。


「明日は大丈夫だから。」


電話口で確かにそう言った夕べ。


もう忘れたかの様な顔してた。