カコン

と小さな音を
たててでてきた

ホットココアの缶を
ぎゅっとにぎって


冷たくなってしまった
私の手を温ためる


「心愛っ―!!!!」


後ろの方からもう聞き飽きてしまった
アイツの声がして

私は立ち止まる


はぁ…

と私は小さな
ため息をつく

…めんどくさい

そんな事を思いながら
もう1度歩き始める


「心愛ってば―!!!」

だんだん声が
近くなってくる


私は自然に足を
はやめる


「待って―

はやい―」

私はさっきよりも
大きなため息をついて

また足をはやめる


「こ―こ―あ―」


通学中の私と同じ
学校の生徒達が

次第に私をじろじろと
見始める


…違う

睨んでるって言った方が
正しいのかも


「こ―こあってば!」


その事にも気付かず
アイツはまだついてくる


「ね―無視すんなよ―」


あまりにも
しつこいので

私は仕方なく
足を止める


「何?」

私はキッと
目を上げて
アイツを睨む


「そんな睨まなくても―」

「…周りの女の子達から
睨まれるから
あんま話しかけないで」

私がそう言うとアイツはきょとんとした顔をして首をかしげる

「あんたモテるから
周りの子達に

…睨まれんの!!」

「ごめん」

アイツはしゅんとして
素直に謝る

…そんな顔して
素直にごめんなんて
言われたら誰だって

可愛いと思ってしまう


…ほんの少しだけ


「俺の事そんな嫌い?」

そう言って
くりくりした大きな目で
じっと私を見つめる


「…嫌いぢゃないけど」

くりくりした可愛い目に
負けて私は思わず

そう答えてしまう

「よかった」

そういうとアイツはぱぁっと
顔を明るくする



…アイツの明るい笑顔を
見ていると

アイツの笑顔には誰も
かなわないとまで

思ってしまう