「…あれから僕は、一体どれだけ名前も知らない町を、転々としてきたのだろうか。どれだけの女の子の初恋の傷を、この左腕に刻み込んでいったのだろうか。…おかげで、少しずつだけれど、でも確実に君の言っていた『心のかけら』は、集まってきていると思うよ。」


「でも…」


「君と過ごしたはずの五年間の記憶は未だ…どこかに行ってしまったきりだよ。」


-そう、君からこの能力を引き継いで以来…-


そう言いながらケイは、包帯でぐるぐる巻きにされた自分の左腕を見つめながら物思いにふけっていた。


…ピーヒャララ~、タンタカタン!
「!」


「…そっか…僕は今、何かのお祭りにきてたんだっけ。」
小気味の良い祭り囃子に、ケイは一気に現実へと引き戻された。
ケイは今、ある町の伝統ある祭りに訪れていた。


-伝統行事、『影祭り』-


…日も暮れ、真っ黒なカーテンで空が覆われる頃、屋台の電灯は控えめに、人がよく通行するポイントに、巧妙に仕掛けられた強いライトによって、様々な影絵が地面に浮かび上がる。