『…うん…。』


しばらくして、夏木君は自分のしていた事に気づいて慌ててあたしから離れた。


「これはお前が犬だと思えなんて言うから、つい犬を抱きしめるかの様にしただけだからな!
じゃなかったら誰がお前なんか…」


なんて憎まれ口を叩く夏木君がいつもならムッとするのだが、今日はあたしの肩をあの夏木君が濡らす程悲しい出来事を経験した彼が今憎まれ口を叩ける様になった事に安心した。


そして、あたしなんかに例え夏木君が犬だと思っていたとしても、目の前で涙を流して弱音を出してくれた事がただ嬉しかった。