ドッキンバックンと飛び跳ねる心臓に夏木君に聞こえていないか動揺しながら、泣きながら抱きしめてくるなんてあり得ない行動に心配になった。


赤ん坊を泣き止ませる様に背中をポンポン、と叩いてあげると抱きしめる力が強まった。
肩が濡れていくのが分かり、切なくなる。


「…弘子の事見方が変わったのは、親が死んだ時だった。」


唐突に話し始めた夏木君に戸惑いながらも相づちをうった。


「それまでうざかっただけの弘子が、学校で俺がしばらく来てない事に気づいて先生に聞いたんだろうな…毎日俺の家に来ては料理作ってくれたり一緒に居てくれた。
ここに来る時も、自分の家に来いと言ってくれた。
…そんな弘子を大事にしなきゃって思った。」