ここは――


「憶えてる?」


微笑む先生に、あたしは大きくうなずき返した。


「初めて、連れてきてくれた――」


思い出の、展望台。

あの頃はまだ先生は彼氏じゃなくて――。


「ここからなら、見えるはずなんだよ」


車を降りて少し歩くと、薄暗くなった空から涼しい風が吹いた。


「――うわあ!」


淡い闇の中、山の斜面から見る街は輝いていた。

ネオンがきらめき、渋滞にはまった車のテールランプが美しい列を成している。


まるですべてがイルミネーションのよう。


「夜景も見れて、一石二鳥なわけですよ」


「――さすが先生!」


「この前連れてきたときに、夜景も見せてやりたいって思ってたんだよ」


「ありがとう...ございます」


素直に嬉しかった。


「――湖はあっち。車が多いからわかるだろ」


この展望台も、花火を見るには穴場スポットなのか――あたしたちふたりの他にも、何組かのカップルがいた。


花火が始まるまであと少し。