「ねぇねぇ、零ってば――どうしちゃったのかしら」


「ぼくもわかんない」


もくもくと問題集を解くあたし。

後ろから、そんなふたりのひそひそ話が聞こえてくる。


「あたしは勉強に目覚めたのよ!」


アキちゃんと雄太くんには、そう公言していた。



前の晩。

憎き門限の呪いを解くために、あたしに与えられた代償は――


『期末テストで全科目90点以上とること。いいわね?』


もちろん、文句は無かった。

先生と過ごす初めての夏休み、大事なイベントのためなら何だってできる!


花火大会の日のみ、1日限りの自由の身なんですが。


『頑張れよ。連れてってやるからな』


先生も、あとはおまえの頑張りに期待してる、と喜んでいた。


頑張れば、先生と花火大会に行ける!


「アキちゃん、ここ教えて!」


「え、ああ...」


「数学得意だよね、雄太くんって」


「う、うん――」


あたしのあまりの変貌ぶりに、ふたりがあっけに取られているのがよくわかる。




そして、迎えたテスト当日――。