そんな話をすると、アキちゃんは意外そうに言った。


「――先生って、なんか不思議な人ね」


「そう?」


「うん、なんか変」


そうかなぁ、と、あたしは首をかしげた。

あたしの中では、これ以上の人なんていない気がするのだが。


「いや、正直――大学生って聞いてたからさ、もっとちゃらちゃらしてるのかと思ってた」


「ああ、たしかに。先生はそんなことないよ」


「――キスぐらいしてくるかと思ってたよ」


横から雄太くんに言われて、あたしはまた赤くなって下を向いた。


「そうよねー!なのにそれどころか、背伸びするな、だなんて」


「そ、そうかなぁ」


今までまともな恋愛経験がないあたしは、そんなことを言われると困ってしまう。


すると、雄太くんが横からあたしの頭をぽんぽんと叩いた。

ちょうど、昨日の先生のように。


でも、向かいに座るアキちゃんはあたしの不安を吹き飛ばすような笑顔を見せた。


「大事にされてるのね――零は」