先生の反応は、意外とにぶかった。


「せのびしなくていいんだけどなぁ、おれは」


「え――」


待ち合わせ場所から、あてもなくドライブをしている途中。

先生はそんなことを言い出した。


「いや、そのリップ。可愛いけど――おまえはそのままがいい」


なんだか嬉しい反面、ちょっとショックだった。


「チューがしづらい」


「――!?」


あたしは思わず、右隣の先生の顔を見上げて――すぐに真っ赤になってうつむいた。


「はは、冗談だよ。ただ、あんまり大人ぶるなってこと」


「...は、はい」


その時のあたしには、先生の言ってることがイマイチよくわからなかった。

むしろ、あたしが朝早くから頑張った努力が否定されたような気がして、なんだか悲しくなってしまった。


そんなあたしの考えは、きっと先生にバレバレだったのだろう。


「――いや、ほら。おれってロリコンなんだよ、きっと」


その言葉に、あたしはぷっと吹き出した。

そんなこと、嘘だってわかってる。


あたしの気持ちを察してくれる先生は――やっぱり優しい。


「あぁ、だから中学の先生なんですね!」