結局、服買うだけでお金が無くなって、化粧品はアキちゃんから貸してもらったんだけど――


『マスカラはダマにならないように!』


デート当日。
アキちゃんに言われた通り、あたしは何度もコームを動かして、まつげについたダマを取っていた。


――正直、生まれてこの方、化粧をしたのは七五三ぐらい。


「女の子って大変だなぁ」


ひとりぼやいて、あたしはリップグロスを取り出した。


『零はせっかく肌がキレイなんだから、ファンデーションは塗らないのよ』


そう言ってアキちゃんは、恋愛成就記念としてリップグロスをプレゼントしてくれた。

小さなラメがキラキラと輝いて――あたしのぷっくりくちびるに乗せると、まるでいちごゼリーのよう。


「きれい」


やっぱり――女の子って楽しい。

好きな人のためにオシャレして、お化粧をして、ドキドキして。


自分を可愛く見せようと頑張って――



「可愛く見える、かな」


鏡の中に立ったあたしは、なんだか見慣れないものだった。


先生が、あたしのこと可愛いって思ってくれればいい、って思っていたのだけれども――