鶴城先生がうちのクラスに来たのは、2日前。
教育実習で、うちの学校に2週間だけいるんだって。


『鶴城、彰平です。鶴の城って書いて、カクジョウ』

みんなの前で自己紹介した先生に、あたしはひとめ惚れをした。

スラッとした背で、
ちょっと目にかかる長さのサラサラの黒髪で、
細身だけどしっかりした身体で、

なんといっても、メガネ!


銀ブチの細いメタルフレームの眼鏡が、あたしの心をぐっと惹き付けた。

2組の教育実習生の山本先生に騒ぐ祐実ちゃんの横で、あたしは鶴城先生に恋をしてしまっていた。


「えーっと、水の生成式は...」


指名されて黒板の前に立ったものの、あたしの頭の中は先生のことでいっぱいだった。


どうしよう。
鶴城先生、あたしのこと不真面目なやつだって思ったかなぁ。

でも、幸い理科は得意なんです。水の生成式ぐらい簡単だもん。

これが書けたら、少しは――先生の頭の中に、あたしって子の印象、残るかなぁ。


「よく書けたな。戻っていいぞ」