「し、しかし...どうしたんですか?急にそんな」


あたしばかりが、ひとりあたふたしていて、

先生は至って落ち着き払っている。


『いや、別に。ただ――』


ただ――?

先生はそこで、少しだけ黙りこんだ。


でもすぐに、笑うような声が聞こえて、



『いや、浮気してないだろうな、って――思っただけ』



「――?」


とっさに意味がわからなくて、あたしはキョトンとした。


「浮気...?」


『うん』


「うわき?」


ますます意味がわからなくなってしまった。

あたしが、浮気?


「えっと、――どういうことですかね...」


電話口の向こうで先生は笑いながら――今まで聞いたことのないような色っぽい声で、あたしにささやいた。


『――おまえ、おれのこと好きなんだろ?』


「――!!」


ぐっ、と、電話を握る手に力を込めてしまった。


「な、なんでですか!」


一瞬にして手足の指先から血の気が引いて――あたしは冷たくなった。


ばれてる!!