『あ、どうせおまえあれだろ。受験勉強中に行き詰まって、暇つぶしに電話してきたんだろ』


ちょっと違うんだけど、この際まぁいいか。


「あ、はい...すみません...」


『――勉強ちゃんと上手くいってる?』


「いえ、あんまりです」


電話口の向こうから、あんなに恋焦がれていた先生の声が聞こえる。

でも不思議と、落ち着いていられる。


『だろうな。中3のこの時期って、あんまり受験って実感わかないだろうし』


受験というより――

あたしには、先生と電話で話してるってことのほうが、あんまり実感わかないよ。


『志望校は?』


「えっと、南高です」


『今の偏差値は?』


「だいたい55…数学が50ぐらいです」


『数学か』


そこで先生は、うーんと考え込むような様子になった。


『メアド教えて』


「え――」


『わかんないとこ、メールしろよ。数学は得意だから』


またもや願ってもないチャンス!


『もちろん、数学に限らず何でも。中学レベルなら俺もなんとかなるし』


嬉しい!