ひとみ先輩を見送って、あたしはドアを閉めた。
そのまま、もたれかかる。

「結婚、かぁ――」


誰もいない部室に、あたしの声が小さく響いた。

遠くで授業の終わるチャイムが聞こえる。

あたしは窓際のソファに腰かけて、ひとみ先輩に貰った封筒を開けた。


「6月30日、か...なんも予定ないよね」


部室の壁にかけられたカレンダーをめくり上げた。
6月30日の欄には、行事ごとは何も書き込まれていない。


「ご出席、です――」


出席の欄に、大きくマルをした。

こういう時って、『ご出席』の『ご』は、二本線で消すのが常識なんだよね?


「結婚式かぁ...すごいなぁ」


あたしってば、さっきからそれしか言ってない。


「――ただいまー!」


その時、部室のドアが開いて、授業に行っていたアキが帰ってきた。


「あっおかえり!あのねアキ、さっきひとみ先輩が来たよ!」


「マジ?久しぶりだねぇ」

アキはパックのお茶をストローで飲みながら、勢いよくあたしの隣に腰を下ろした。


「何しに?」


あたしはふふっと笑った。

「ほら、じゃ〜ん!」