ふたり寄り添うわけでもなく、海岸から少し上ったところにあるベンチに腰かけた。


無言のまんまで、ゆっくりとした時間が流れて――

駆け落ち、って、こんな気分なのかな、なんてことをひとり考えていた。


「おまえは――この6年、どんなふうに過ごしてきた?」


先生からの突然の質問は、あたしをずいぶんと返答に困らせるものだった。


「うーん...」


雄太ナシには、この6年は語れないのが正直なところ。

でも、こんな時に雄太のことは思い出したくないのも、正直なところ。


「先生に捨てられてからは、ずっと雄太がそばにいてくれました。だからあたしは、先生を思い出して苦しまずに済んだ」


前半は事実。
後半は――うそ。

それに今までの悔しさなんかがあったから、あたしは先生を困らせたかった。


「――捨てられた、か」


それを聞いた先生は寂しそうな嘲笑をひとつして――。


「先生は?」


同じような答えが返ってくるとばかり思っていたあたしだったから、次の言葉には思わず息を飲んだ。



「おれは――後悔ばかりの6年だった」