綺麗に整備された歩道には、やけに場違いな白い砂が落ちている。

なんだか変だと思った。


まるでその白い砂が、海岸の砂を思い出させるようだったから。


「来たことない?」


うん、とうなずいて――


『先生は、ひとみさんと来たことあるの?』


って聞こうとして、やっぱりやめておいた。

そんなことを聞いたところで、今はなんの意味も持たない。


するとすぐに、歩行者専用のトンネルが現れた。

ずいぶんと長く続いているようで、トンネルの向こう側に見える光は――かなり小さくて、頼りない。


真っ暗な中を、先生と手をつないで歩いた。


先生とまともに手をつなぐのなんて、当たり前のことだけれど、何年ぶりだろう。


出口まではやっぱり距離があったのだが、先生とはひと言も喋れなかった。

お互いに、今日ここに来たことの意味を噛みしめているようで。


出口に近づくにつれ、あたしは先生とつないでいた手を離した。


許されない関係を、真っ青な空の上から見てる――神さまに見つかるのが、怖かったんだと思う。