先生と別れてからのこの長い歳月――

先生のことを忘れようと、ずっと先生のことを考え続けていた。


雄太のことを利用して忘れようとしても、心のどこかで彼と先生を比べている自分がいた。


先生はやっぱりあたしの――すべて、だった。





“ゼロには何をかけてもゼロになる。”


たしかに、先生に出会うまで、あたしの心はまっさらでたいして何もなかったけれど、

先生とふたりで同じ月日を歩むうちに、


先生との思い出ひとつひとつが積み重なって――すっかり、先生の色に染められてしまった。


小学生でも知ってる。

ゼロは、他の数を足せばゼロじゃなくなる。

一番最初に足した数に染まってしまう。


あたしも一緒。





ぼんやりと、これからのことを考えていた。

あたしの過ちが、世間一般に許されるはずもない。


先生は――どういうつもりなのだろう。


立場がまずくなったら、また捨てられるのだろうか。


それでもいいと思った。

熱くなって馬鹿を見るのは――あたしだけで十分だ。