先生に誘われるがまま、小さな喫茶店に入った。


ひとみさんや雄太の手前上、先生と一緒にいるのは避けなければならない。

頭ではそうわかっていても、自分を止めることができなかった。


胸の動悸は、依然おさまらない。


「コーヒーと...おまえは?」


「――アイスティ、ひとつ」


やっとのことで発したひと言――緊張で、口の中はからからになっていた。


「4年のこの時期だと――ずいぶん学校も忙しいんじゃないか?」


「そう、ですね」


「卒研は?ちゃんとまじめに進んでるのか?」


「全然です。卒業すら、危ういかも」


そんな会話に、どちらともなく笑みがこぼれて、あたしはようやく落ち着いた。

運ばれてきたアイスティは、アールグレイのいい香りがして――あたしのほてった心を、冷ましていく。



偶然か、はたまた神さまにとっては必然なのか――出会うことはないように思えたふたりが、またこうして向かい合っている。