自分の机の引き出しの中に、今でもこっそり隠し持っているものがある。


――指輪と、ネクタイ。


紫色のガラス玉が埋めこまれた華奢なピンキーリングは、ずいぶんとそのメッキがはがれてきている。

だってもう、あれから6年以上も経っている。


ふたりの思い出とともに、錆びついてしまっても――それは仕方がない。


磨けばまた、光ってくれるのだろうか。




あのころは全く知らなかったのだが、ネクタイを贈る行為には――深い意味が込められるという。


なんだか古くさくて、聞いてるこっちが恥ずかしくなってしまったが、

――“あなたにくびったけ”っていう意味がネクタイにはあるんだって。


ついこの前、テレビでそう言っているのを聞いたときは、思わず笑ってしまった。

まさに、その通りだったから。


クリスマスイブに、先生に――渡すことができなかった、あのネクタイ。





今でも、その気持ちは変わっていない。