あたしの知ってるひとみ先輩は、

綺麗で優しくて、後輩の面倒見もよくて――


みんなから、慕われる人。


あたしももちろん例外ではない。

ひとみ先輩の存在は――憧れ、だった。


「結婚式の招待状わたした時の、零ちゃんの反応...楽しみにしてたんだけどな。

でも思ったほど、新郎の名前って見ないもんなのね。なかなかリアクションが無いから面白くなかった」


頭痛と、めまいがしてくる。

あたしは、どこでなにを、間違えてしまったんだろう。


「じゃあ...ずっと――ひとみさんは、あたしのこと...笑ってたんですね」


「――そうよ」


静かに見上げたひとみ先輩は――やっぱり知らない人に見えた。

でも不思議と、なみだは出てこない。



そこでふと、アキが前に言っていたことを思い出した。


“よくない噂も、聞いたことがある”


そういえば以前、アキが話していたじゃないか。

アキの友達が、ひとみ先輩に男を寝取られた、って。


あの時点で気づくべきだった。

ひとみ先輩の、ほんとうの姿に。