「彰平と零ちゃんが昔付き合ってたことは、知ってるわ」




「――へ?」


大きく口をあんぐりと開けたまんま――あたしは呆然となった。

知っていた?
まさか最初から?


「だってそりゃあ、あなたから彰平をとったのはわたしですもんね」


「じ、じゃあ...!」


「ずーっと知ってた。わたしが高校生のとき、南高まであなたを見に行ったことあるもの」


開いた口がふさがらない、とは、まさにこのこと。

じゃあずーっと、ひとみさんはあたしと先生のことを最初から知っていた?


「ごめんなさいね、まさかあの時――ほんとうに、彰平があなたを捨てるとは思ってなかったから」


勝ち誇ったように微笑む――目の前にいるこの人が、誰なのかふいにわからなくなる。

ほんとうに、大学のサークルを一緒に過ごしたひとみ先輩、なのだろうか。



ひとみ先輩は――すっかり変わってしまった。


いや違う。

あたしが彼女のほんとうの姿を、見抜けなかったんだ。