「手でもつないでたら――おれきっと、先生をぶん殴ってた」


思わぬ強い言葉に、あたしの顔はこわばった。

雄太の中に眠る、そんな強い感情を――あたしはまだ、見たことがない。


あたしのそばにいてくれる雄太はいつだって、

優しくて、少しだけ甘えん坊で――穏やかな、人だったから。


「...ごめんなさい」


御免と言えば済む話ではないとわかっていても、そうしか言えなくなっている自分がいる。

まるで小さな子どもが悪いことをして――ママに、こっぴどく叱られているよう。


ごめんなさい。

もうしません。



“もうしません”と言いかけて止まったのは、

その言葉があまりにも、テレビドラマの浮気がばれた修羅場のシーンによくある陳腐なものだったから?



それとも――

“もうしません”とは、神さまに誓えないものだったから?


「もう謝らなくていいよ」


そう言って、雄太はあたしの髪に触れた。

雄太の指先からは――そのあたたかさは、伝わってこない。