そこでふと、思いあたることがあった。


――それは、相手が先生だったから?


雄太は、あたしが先生にふられた――その傷を癒すのに、どれほど時間がかかったかを知っている。

だって雄太が、あたしの傷を消してくれたようなものだった。


ずっとずっと、雄太がそばにいてくれた。



心を動かしてしまった相手が先生だったから――雄太は、なにも言わずにそばにいてくれたの?

もし、
そうだとしたら――


「――ごめんなさい...」


それは間違いなく、雄太の優しさだった。


「ほんとに、ごめんなさい――っ」


なみだが止まらなくなったあたしのほほを、雄太があやすようにそっとなでる。


「ふたりであじさいを見たあの日から――なんとなく、気づいてたよ」


その表情は、全く乱れていない。


「ファミレスで先生とその彼女に会ったでしょ?あのとき、確信したよ。

――“鶴城”なんて名字、ぼくが知ってるのはひとりだけだったからね。しかも、ぼくは会ったことのない人」