「おかえり」


そう言って雄太は迎えてくれた。

ほんとうに、雄太にあわせる顔がない。


さっきこぼれた涙は乾いてはいなかったが、あたしは顔を上げた。


「ねぇ雄太。大事な、話がしたいの」


雄太は少しだけ驚いたような顔をして――すぐに何かを察したように、うん、とうなずいた。


鋭い雄太のことだ。

きっとその意味をすぐに理解したに違いない。


「――なんか飲む?」


そう言っていれてくれたのは、甘い香りのする、キャラメルミルクティだった。


「こんなの、雄太飲むの?」


不思議に思って聞くと、雄太は可笑しそうに笑った。


「それ買ったの、零ちゃんでしょ。この前ふたりで買い物行ったときにさ」


ああ、そうか――

これから寒くなるから、と言ってあたしが買い物カゴに勝手にいれたんだっけ。

そしてその日は珍しく、雄太がお昼ご飯を作ってくれたことを思いだした。

メニューは親子丼。

明日は雪でも降るんじゃないかって笑い合った――


そんなささやかなことでさえも、“幸せ”と呼べたのに。