「だってもう、あんたを止められるのは雄太しかいないじゃない」


アキの表情はみるみるうちに歪んでいった。

普段は決してなみだを見せないアキが、あたしよりも先に泣いてしまっている。


「――でも、あたしはアキを友達だと思ってたのに...」


「友達だからこそよ」


それでもなお、アキの口調は激しさを失ってはいなかった。


「アキはわかってくれると思ってた。まさか、アキに裏切られるなんて――」


高校時代は恋も夢もなんでも、包み隠さず――お互いに語り合った、親友。

思わずそうつぶやいたあたしを、アキがキッとにらみつける。



「裏切ってるのはどっちよ?」



その言葉とアキの瞳からこぼれ落ちるなみだが、あたしを冷静にさせた。


「――ごめん」


ぽつりとつぶやいたあたしの視界も、みるみるうちになみだでぼやけていく。


――裏切ってるのは、どっちだ。


自分の愚かさに、改めて気づかされた瞬間だった。

ひとみ先輩を不快にさせて、アキに心配をかけて――


なにより、雄太を裏切って。