放課後。

あたしは理科準備室に向かって歩いていた。


待ってるだけじゃ、何も始まらない。
何らかのアクションを、自分から起こさないと!


とは思うものの。
やっぱり緊張してしまって、口の中がカラカラになる。


でも、ここで頑張らなかったら――先生と、二度と会うことはないかもしれない。


鶴城先生への気持ちが、単なる憧れだとしても、

先生との接点を、ひとつでも増やしておきたいんです。





「――先生、教えてよぉ!」


でも理科準備室の前に立ったあたしは、嫌な会話を聞いてしまった。

部屋の中から、女の子の声が聞こえてくる。


「いいじゃん!ねっ、先生」


「いやだ」


「え〜なんでぇ?」


「ケータイなんか持ってません」


「うそだぁ!メアド教えてよ〜」


「絶対いやだ!めんどくせぇ」



部屋の外から話を盗み聞きしていたあたしは、思わずドキリとしてしまった。


やっぱり...

あたしとおんなじように、鶴城先生にメアドを聞きに来てる子がいる!



でもそれ以上に――

先生が、メアドを教えようとしていないこと。