――どうして、知ってるの?


「アキ、なんで――っ」


完全に、あたしは冷静さを失っていた。

指先が、冷たくなってかたかた震えている。


さらに、次にアキから聞かされた答えは、もっとあたしを地獄に突き落とそうとした。


「ひとみ先輩から、聞いた」


「ひとみ、さん...?」


ふうっ、と、アキは長いため息をついた。

そして、哀れむような目であたしを見る。


「その様子だと――ほんとうみたいね」


否定できなかった。

用意していた言い訳も、ついに話すことはできなかった。





つい先日、アキの元にひとみさんからの電話がかかってきたらしい。


“うちの彼氏が、零ちゃんと一緒にいるところを見ちゃったんだけど...。”


話を聞くと、ふたりきりで、夜のファミレスにいたらしい。

たまたま外を通りかかって――見てしまった。


泣いている零を、頭をなでてあやすような先生を。


“亜樹ちゃん、なにか知らない?ふたりのこと”


アキは、何も言えなかった。