「ひまっちゃあ、ひまだけど――どうしたの?」


『聞きたいことがあるの』


「...なに?」


『会って話がしたい』


ただならぬ雰囲気だということくらい、鈍いあたしでも簡単に察知できた。


「今、雄太の家にいるんだけど――」


そこで、電話の向こうから――なんだか、深いため息のようなものが聞こえた気がした。


『あんたひとりで来て』





電話を切って、あたしはカバンを持ち上げた。


「アキが、なんか今から来てくれって。だからごめんね――ちょっと、帰るね」


「急用?」


「うん...よくわかんないけど」


アキの様子がおかしかったことに、あたしはいいようのない胸騒ぎを感じていた。

今までに、こんなアキは見たことがない。


「また夜ひまだったら――ここに帰っておいで」


雄太はそう言って、あたしのおでこに軽くキスをしてくれた。

そこがなんだかあったかくなって、あたしは雄太に抱きついて、うん、とうなずいた。