結局、先生から“大事な話”というものを聞きそびれてしまっていた。

だが、あれから二週間は経つのだが――あの日以来、先生からの連絡が入ることはなかった。


いつの間にか、季節は移り変わり――暦の上では秋になっていた。

とはいえ、9月は大学生にとってはまだ夏休み。


結局、院試も受けなかったあたしは、雄太の部屋で自堕落な夏休みを送っていた。


家に独りでいたら、嫌でも先生のことを思い出してしまうから。


そんなことでも、雄太を利用してるのかな――あたしって。


「あ、零ちゃん、電話じゃない?」


カバンの中にしまってあるケータイが震えていたことにようやく気がついて、あたしは慌てて取り出した。

電話の相手は――アキ。


「もしもし?」


用事はいつもメールで済ますアキから電話がかかってくることなんてめずらしいから、あたしの声は変に上ずってしまった。

それを聞いて、雄太が笑っている。


『零、今からひま?』


でも、電話口のアキの声は――

ずいぶんと、堅苦しいものだった。