嵐が去ったあと、先生は困ったように笑いかけた。


「ごめんな。あいつら、俺の教え子なんだよ。そういや――言ってなかったよな。おれ、高校の化学の先生になったんだよ」


――やっぱり、先生はほんとうの先生になっていたんだ。

でもそんなことよりも、あたしの頭の中は、さっきの言葉でいっぱいだった。


「あれから1年留年して、大学院行って――ほんとは博士課程まで行きたかったんだけど、卒業して、今は工業高校にいるよ」


笑顔で話す先生とは対照的に、あたしの表情はどんどん曇っていった。

そんなあたしの異変に気づいて、先生があたしの顔をのぞきこむ。


「――どうした?」


どうした、じゃないよ。

だって、先生今なんて――


「ひどいよ」


こらえていたものがせきをきってあふれだし、あたしの両頬をつたい落ちた。


「先生はひどい」


なみだが止まらなかった。


「どうしたんだよ」


先生は焦ったように、向かいに座るあたしの頭をぽんぽんと叩いた。