「あのときは禁煙してるみたいできつかったな」


そう言って、先生は笑った。


こんなふうに、昔を思い出しながら先生と向き合っていると――

現実に引き戻されたときに、悲しくなる。


いっそ、あの頃に戻ってすべてをやり直せればいいのに。


「――大事な話って、なんですか?」


頭の中に湧いたよこしまな思いを振り払いながら、あたしは聞いた。


「...ああ」


煙草のけむりをくゆらせて、先生はいたってのんびりとした様子で、あたしの目を見据えた。

でもあたしは思わず、目をそらしてしまった。


なんだか、恐怖と――不安を、憶えたから。



その瞬間、なにかを言いかけた先生の言葉を遮ったのは――若い男の声だった。

「先生!何してんの?」


びくっとしてあたしが見上げると、そこには黒い学ランを着た男の子たちが数人立っている。


わけがわからず、あたしが先生とその男の子たちとの間で視線を彷徨わせていると、


「――おまえら...」


先生が頭をもたげて、大きなため息をついた。