ちょうどそれは、高校受験前に先生とふたりで勉強会をした、あのファミレス。

ふたり無言のまま向き合って、もうずいぶんと時間が経った。


テーブルに置かれたアイスコーヒーのグラスだけが、ときどき氷が崩れて音を立てている。


店の中は夕食どきということもあって、騒がしいのだが――先生との空間だけが、それに反するように静まりかえっていた。



そのとき、先生がテーブルの隅に置いてあった灰皿に手を伸ばし――おもむろに、煙草とライターを取り出した。


「――煙草、吸うんですか?」


「うん」


意外だった。

あたしと一緒にいるときに、煙草を吸ってるところなんて見たことがない。


でも先生は、ずいぶんと慣れた手つきで煙草を取り出し、火をつけた。


「いつから?」


「高校のときから」


「じゃあ、あたしと付き合ってたときは?」


「うそついて隠してた。さすがに、高校生の彼女の前だと自重するよ」


あの頃のあたしは、先生に大事にされていたのかな、なんて――

そんなくだらないことを、ぼんやりと考えていた。