雄太の表情や態度はほんとうに普通だった。


「参ったよ、急に研究が入るんだもん。一昨日はマジでごめんね」


「ううん、大丈夫」


やたらなことを口にして、自分からボロを出さないように――あたしは、一つひとつの言葉を慎重に選びながら喋った。


「やっぱり、大変なの?学校のほうも」


「ん――そうかもね。やっぱり専門の授業も多くなってくるし」


できるだけ、花火大会の話題からは遠ざけようとしたのだが――あたしのそんなささやかな努力は、あっけなく破られてしまった。


「花火、亜樹ちゃんと見に行ったの?」


「あ、ああ――うん...」


焦りと不安を、顔にだけは出さないように気をつけつつ、ぎこちなくうなずいた。


「わざわざうちに来てくれたんでしょ?お母さんから聞いたよ。ごめんね」


「――亜樹ちゃん、バイトの休みとれたんだね」


雄太の目が鋭くなった気がして、あたしはまともに彼の顔を見れなかった。


「う、うん...そうだったみたい。ちょうど、偶然」