近く(とはいえ、あまり近くもない)の高校に設けられた臨時駐車場を通りすぎて、あたしたちはあてもなく歩いていた。

花火の音も、すっかり小さくなっている。


履き慣れない下駄の鼻緒が指にすれて痛くてたまらなかったけれど、不思議と歩く足が止まらない。


むしろこのままこうして、ずっとずっと、先生とふたりで歩いていたい。


「――あれ、彼氏だったんだな」


少しだけ弾みかけていた会話を打ち砕いたのは、先生だった。


「ファミレスで一緒にいたやつ」


ピンで留められた虫のように、あたしは動けなくなった。


「夏祭りのとき、久しぶりにおまえに会っただろ?あの時、ほんとは少し前から、おまえに気づいてたんだよ」


先生の言葉で、雄太の顔が頭に浮かぶ。

どくんどくん、と、異常なまでに鼓動が速くなっていくのがはっきりとわかる。


「おまえの彼氏と、“アキちゃん”がそろって浴衣だったから――おれはてっきり、あのふたりがカップルなんだと思ってたよ」


苦笑いをした先生の隣で、あたしは何も言えなかった。


ふたりの距離は、

すぐに指先が触れてしまうほど、近かったのに。